サンタ通信No189(04)表 H27.04.18発行

 春になって感染症が少なくなってきた

 今,ハワイ島のヒロという町に来て,この通信を書いています。ハワイ島の西のコナ地区は,溶岩で埋め尽くされた,ほとんど雨の降らない地域で,リゾートホテルがいっぱい立ち並んでいます。逆に,東のヒロ地区は雨の多い土地で,緑が豊かで,日系人の多い町で知られています。昔は日系移民がサトウキビ栽培に携わっていましたが,現在はノスタルジーを求めて,観光客が多く訪れる田舎の町といった所です。といっても,人口はハワイ諸島の中でホノルルに次いで2番目に多く,果物や蘭の生産が盛んな土地です。1946年と1960年に10mを超える大きな津波に2回襲われ,街全体が被害を受けてしまったので,今はヒロ湾の沖に,湾をふさぐように大きな堤防が造られています。鹿児島と同じように,活火山のキラウエア火山がヒロから車で1時間くらいの距離にあり,夜に火口へ行き,噴火口からのマグマの赤い火炎現象を見てきました。この火山は今も溶岩を噴出しており,海まで溶岩が流れています。桜島のように噴火する形ではなく,ダラダラと溶岩をあふれさせるような火山活動のため,火口近くまで行けるのです。

 さて,最近1週間(4月6日~4月12日)の感染症情報です。1週間で最も多かったのは,溶連菌感染症で77人でした。次いで,感染性胃腸炎23人,手足口病2人,咽頭結膜熱2人,突発性発疹1人,インフルエンザ1人でした。春休みがあったせいで,全体的に感染症が少なくなってきました。インフルエンザはかなり減りましたが,まだ完全に終息していません。4月いっぱいは,このような週に数人のペースが続くかもしれませんね。この週の1人はA型でしたが,その前の週はB型の人だけでした。今はB型が大部分を占めます。クラスに発熱で休んでいる人がいたため,検査をしたらインフルエンザが陽性でした。周りにインフルエンザの患者さんがいなくても,発熱で友達が休んでいる時には,まだインフルエンザも考える必要がありそうです。

 溶連菌感染症については,流行が続いています。毎日10人程度いますので,周囲の流行状況には注意が必要です。特に学校や幼稚園で新しいクラスが始まる時期は,溶連菌に抵抗力のない人へ菌が感染する機会が増えます。そのため,例年は4~5月に流行が大きくなることが多いです。発熱とのどの痛み,苺のような舌の症状に注意しましょう。

 RSウイルス感染症は冬に多い感染症で,新生児や乳児,未熟児が感染すると,呼吸困難に陥り,命を落とすこともあります。以前は,夏には少ないといわれていましたが,簡易な迅速検査で診断がしやすくなったため,夏でもある程度,流行していることが分かってきました。生後3か月未満の赤ちゃんに対しては,咳や鼻水などのカゼ症状があれば,RSウイルスの検査を積極的にして,この病気で命を落とすことがないようにしたいと考えています。

 感染性胃腸炎は1週間に23人と,まだ多い状況が持続しています。嘔吐で水分摂取ができない時には,吐き気止めの薬を使いながら,少しずつ繰り返し水分を摂らせてください。脱水が強くなれば,点滴が必要です。これから夏にかけては,流行が下火になっていきます。家族に嘔吐や下痢をしている人がいれば注意が必要だと思います。ノロウイルスやロタウイルスなどのウイルス性胃腸炎ですので,嘔吐物や便の接触により感染します。嘔吐物の処理は手袋を使って拭き取り,できればハイター等の漂白剤を薄めた消毒液でその跡を拭くようにしてください。おむつやお尻に触れた時も,手洗いをしっかりすることが,周囲への感染を防ぐために大切なことです。


5月3日(日)は当番医を担当します。救急患者の方は受診されてください。ゴールデンウィークのお休みは暦通りになります。

サンタ通信No189(04)裏 H27.04.18発行

 ロタウイルスワクチンの補助が決定

 鹿児島市が7月1日からロタウイルスワクチンを受ける時に一部公費負担することが決まりました。ワクチンには1価と5価があり,1価は2回接種が必要で,5価は3回接種が必要です。公費負担額(割引額)は1価が6,000円,5価が4,000円です。各医療機関で接種料金が違いますが,当院では1価が1回13,000円のところを割引額を引いて1回7,000円。5価は1回9,000円のところを5,000円で受けられることになります。


   1価(ロタリックス)料金:1回7,000円×2回=総額14,000円(自己負担分)

   5価(ロタテック)料金 :1回5,000円×3回=総額15,000円(自己負担分)


市民税非課税世帯や生活保護受給者などの低所得者についても同じ自己負担額になるとのことです。接種時期は1価が生後6週~24週まで,5価が生後6週~32週までとなっており,どちらのワクチンも腸重積という病気を引き起こさないために,初回接種を生後14週6日までに行うようにとの条件があります。接種間隔は4週以上あけます。体調が悪くて2回目や3回目がそれぞれ24週,32週を超えてしまった時は,受けられなくなります。また,ワクチン接種後7日以内に腸重積を発症することがあるため,嘔吐や血便の症状があれば,病院を受診するようにしましょう。このワクチンは任意接種ですので,対象年齢の方に通知はされません。受けたい人は,個別に病院に予約を入れ,病院に予診票が配布されていますので,その予診票で受ける形になります。半額に近い料金になりましたので,是非受けさせてあげてください。

 夏カゼについて

 手足口病やヘルパンギーナといった夏カゼは,5月頃より増えてきます。これらの病気は,いろいろな種類のウイルスが引き起こしているため,繰り返しかかってしまいます。去年かかったから,もう手足口病にはかからないと思われている方もよく見かけます。手足口病というのは,コクサッキーウイルス・エンテロウイルスが原因で,症状は発熱と発疹が主症状です。発熱は3分の1くらいの人にみられ,あまり高熱にはなりません。発疹は手のひら,足の裏,口の中に小さな水疱が出現し,数日で消えていきます。治療法も特にないのですが,ほとんどの患者さんは自然治癒していきますので,あまり心配はいりません。ただ,エンテロウイルス71型によって起こる手足口病は,髄膜炎や脳炎といった中枢神経系の合併症を起こしやすく,高熱が続き,頭痛・嘔吐などの症状が出てきます。このような場合は,必ず病院を受診しましょう。感染経路は,くしゃみなどによる飛沫感染と便中に排出されたウイルスが手を介して口に入る糞口感染です。保育園・幼稚園などで流行を拡大させないためには,トイレ後の手洗い,おむつ交換時の手洗いが大切です。症状が消えた後も2~4週間は便中にウイルスが排出されますので,普段から手洗いをしっかりする習慣をつけておくことが大事です。

 ヘルパンギーナも同じコクサッキーウイルスやエコーウイルスによって引き起こされる夏カゼのひとつですが,こちらは発熱が中心になります。39℃くらいの高熱が2~4日間続き,のどの痛みを伴います。口の奥を見ると,赤い斑点の中に小さな水疱が数個あり,つぶれて浅い潰瘍になって治っていきます。口の痛みが強いと,水分や食事が摂れず,脱水症を起こしてしまうことがありますが,ほとんどの患者さんは自然治癒していきます。まれにヘルパンギーナでも髄膜炎を起こすことがありますので,頭痛・嘔吐を伴うヘルパンギーナには注意が必要です。感染経路は手足口病と同じで,こちらも治った後に2~4週間は便中にウイ

ルスが排出されますので,手洗いは大事です。手足口病とヘルパンギーナ,どちらも学校や幼稚園での出席停止の基準は明確ではなく,1か月間ウイルスが排出されますので,感染の危険性がなくなるまで休むわけにはいかず,解熱して全身状態が良ければ,登校・登園を許可しています。