サンタ通信No195(10)表 H27.10.18発行

    咳込みに注意

 人々の服装が,すっかり秋の装いに替わりましたね。郊外をドライブすると,稲穂が重く垂れて,きれいに実った田んぼをよく目にします。そろそろ収穫の時期ですね。鹿児島の紅葉は11月になると楽しめます。霧島や曽木の滝など,紅葉の名所は,この時期はすぐに駐車場がいっぱいになって,朝早くに出発しないと,駐車場待ち数時間という残念なことになってしまいます。私は火曜日がお休みですので,それほど混雑しませんが,それでも紅葉の美しい時期は,朝早く出かけるようにします。11月に久しぶりに霧島を散策してみたいと思っています。

 さて,最近1週間(9月28日~10月4日)の感染症情報です。1週間で最も多かったのは,溶連菌感染症で37人でした。次いで,RSウイルス感染症6人,感染性胃腸炎6人,手足口病4人,伝染性紅斑2人,突発性発疹2人,咽頭結膜熱1人,おたふくかぜ1人でした。溶連菌感染症とRSウイルス感染症が多い印象です。RSウイルス感染症やマイコプラズマ感染症など,咳がひどい病気が目立っています。今,朝晩の気温差が大きく,昼間暑くても,夜は肌寒くなります。そのまま軽装でいると寒気がして,風邪をひいてしまいます。また,秋は花粉などのアレルゲンが多く,喘息などのアレルギー疾患が悪化しやすいために,RSウイルス感染症やマイコプラズマ感染症の患者さんの中には,喘息発作のような症状を呈するお子さんも,よく経験します。RSウイルスはウイルスですので,特効薬はなく,咳止めの薬を服用しながら,吸入処置などの対処療法で経過をみます。ゼーゼーが強くて夜眠れないとか,哺乳や食事ができない場合は,入院治療を考えます。

 マイコプラズマは細菌とウイルスの中間にあたるマイコプラズマ ニューモニエという病原体により感染します。このマイコプラズマには,抗生物質が有効ですが,よく使われるペニシリン系・セフェム系の抗生物質は無効です。有効なものとしては,マクロライド系とテトラサイクリン系の抗生物質があります。ところが,マクロライドはとても苦くて,飲みづらい薬です。粉薬の表面をコーティングして,苦みを抑える工夫をしているのですが,口に少しでも残ってしまうと,コーティングがはがれて,苦みが出てきます。お子さんは,苦みが判ると,次からこの薬を飲んでくれなくなります。そうならないためには,しっかりと水分で流すように飲み込んで,口の中に薬が残らないようにする必要があります。マクロライド系の抗生物質としては,エリスロシン・クラリス・クラリスロマイシン・クラリシッド・ジスロマックなどがあります。テトラサイクリンは苦みはほとんどありませんが,8歳以下の子どもに投与することは避けた方が良いとされています。黄色歯という副作用があるからです。昔は良く使われたくすりで,ミノマイシンという薬がこのテトラサイクリンの抗生物質になります。肺炎によく効くということで,多くの子ども達に使われてきましたが,歯に黄色の色素沈着が永久に残ったり,エナメル質の形成不全が起こったりする可能性があるため,他に選択肢がない場合のみ,使うことになっています。このように,マイコプラズマに対して使う抗生物質の選択に困っていました。しかし,最近はニューキノロン系の薬(オゼックスなど)が,マイコプラズマに効くということで,大人用として,オゼックスの錠剤を使用してきました。5年くらい前に細粒も発売されるようになり,子どものマイコプラズマに対して他の抗生物質で治療できない時に使う機会が増えました。中耳炎にもよく効くため,小児科と耳鼻科で処方されることが多くなってきています。ただ,使いすぎると,耐性ができて,薬の効果が落ちてくるので,最初からニューキノロン系を使うことは勧められていませんん。

 

 11月22日(日)は当番医を担当します。救急患者の方は受診されてください。

 年末年始は12月29日~1月3日が休診となります。定期薬を服用されている方は早めに受診しましょう。

サンタ通信No195(10)裏 H27.10.18発行

    発熱時の対処法

 お子さんに高い熱が出ると,まずは病院へ駆け込むという人が多いと思います。しかし,熱が出るということは,自分の身体が,侵入してきた菌やウイルスに対して,正常に反応している状態なのです。高熱が出ると,きつい思いをしますが,菌やウイルスなどの病原体はその熱で弱められ,病原体がいなくなると,身体は熱を下げて,元の状態に戻ります。「高熱で頭がおかしくなってしまいませんか?」「ひきつけを起こすのでは?」などと,保護者の方はいろいろ心配されますが,顔色が良くて,水分も摂れている時は,半日から1日は経過を観察しても良いのです。髄膜炎などの重症の病気は,血液検査をすれば,ほとんど診断できます。ところが,発熱直後だと,血液検査をしても,異常が出ません。強い炎症所見があるかどうかを,血液検査でみているため,発熱後12時間以上経過しないと,その反応が出ないのです。子どもの発熱の原因は,多くがウイルスによるもので,ほとんどの場合は薬なしで自然に治っていくのを待ちます。39℃台までの発熱であれば,水分を摂ってくれるかどうかをみながら,熱を数時間毎に計って,熱型をみることが大事です。40℃を越えてくる場合や,嘔吐がみられる場合,意識がボーとする場合などは,すぐに受診した方が良いです。また,3か月までの赤ちゃんの発熱は,待たずに病院を受診する必要があります。

 では,解熱剤(げねつざい)は,どういう場合に使うべきでしょうか。解熱剤の効果は,汗をかかせて熱を下げる作用になります。一時的には熱が下がりますが,数時間で薬の効果が切れると,また熱は上がってきます。解熱剤は病気を治すわけではありません。では,解熱剤を使う必要があるのでしょうか?高熱があると,子どもはすぐにぐったりして水分が摂れなくなったり,ぐずって眠りが妨げられたりします。病気を治すには,十分な水分補給が必要ですし,十分な睡眠も大事です。ですから,水分が摂れて,機嫌もあまり悪くない時は解熱剤は不要ですが,反対に,水分が摂れていない時は,脱水状態に陥り,汗で体温を調整する働きがうまく作用せず,解熱が遅れてしまいます。ですから,解熱剤を使って一時的に熱が下がった時に,水分や食事を摂らせるようにします。解熱剤を使わない小児科医もいらっしゃいます。解熱剤を使わないというご家庭もよく経験します。もちろん,それはそれで構いません。発熱自体が,体の正常な働きの一つですから,無理に下げる必要はありません。解熱剤を使いたい・使いたくないというご意見を尊重しながら,治療をしています。ご家族の要望は,遠慮せずにしっかり伝えた方が良いと思います。

    気管支喘息の原因

 喘息は,発作性に起こる気道狭窄(気管が狭くなること)によって,喘鳴(ゼーゼー,ヒューヒューする呼吸音)や呼気延長(息を吐く時間が長くかかる),呼吸困難を繰り返す病気です。このような症状は,自然に治ることもあれば,治療で軽快することもあります。その原因は,遺伝素因の上に,いくつかの環境因子が作用すると発症します。喘息は乳幼児期の発病が多く,次第にその年齢が低くなってきています。喘息の患者数の性別は,若年小児では男児に多くみられ,思春期で男女ほぼ同数になります。

 遺伝的な要素として,アレルギー素因が最も大きな発病危険因子です。アレルギー素因(アトピー)とはアレルゲンに暴露された時に,IgE抗体を産生しやすい体質のことです。そのような体質は遺伝しますので,家族の中に喘息以外にもアトピー性皮膚炎,アレルギー性鼻炎などの病気をもっている人が多くなります。環境因子としては,吸入アレルゲン(室内塵,ダニ,ネコ,イヌ,花粉,真菌)が主要なものです。卵,牛乳,小麦,大豆などの食物アレルゲンも小児では影響を与えます。呼吸器系の感染症も環境因子の中では重要なもので,ウイルスではライノウイルス,RSウイルス,インフルエンザウイルス,メタニューモウイルスなどがあります。細菌では肺炎マイコプラズマ,肺炎クラミジア,百日咳が知られています。空気汚染も重要な因子です。タバコの煙,花火,線香,暖房器具からの煙,車の排気ガス,火山や温泉から出る硫黄酸化物などが悪影響を及ぼします。その他の因子としては,台風などの気象も喘息発作と関連があります。患者さんの心因(激しい感情表現)も影響します。遺伝素因は自分たちで変えることはできませんが,環境因子については,室内の掃除や家族の禁煙など,一生懸命取り組めば,それだけ手応えが出てきます。

 家の中の環境整備のポイントを挙げておきます。(掃除機をフィルター付きのものにする)(寝具は防ダニ布団を使い,日光干し,掃除機を用いた集塵)(じゅうたんを止めてフローリングに)(ソファは革製か合成皮革)(ぬいぐるみは洗濯可能なものを最小限に)(イヌ,ネコ,ハムスターなど毛の生えたペットは飼わない)(タバコについては家庭内の受動喫煙を防止するために,同居者の禁煙を強く指導する)