サンタ通信No188(03)表 H27.03.18発行

  A型インフルエンザは減少傾向

 最近は,冷たい風が頬を突き刺す日もあれば,シャツ1枚で過ごせる暖かな昼下がりもあり,この季節は本当に三寒四温の言葉通りです。そのため,体調管理が難しく,油断していると,日が陰って,肌寒く感じた後,鼻水や咳が出始めることがよくあります。小さなお子さんの服の調整には,気配りが大切ですね。また,3~4月は進学や就職,職場の移動など,家族に大きな影響を与えるイベントが多い季節でもあります。新たな環境にストレスを感じる人も多いかと思います。子どもも同じです。学校・クラスに溶け込めるのか,不安な毎日を過ごします。周りの家族は,不安を喜びに変えてあげられるように,お子さんができたことをほめてあげて,さらに少し上をめざせるように見守ってあげましょう。子どもが精神的に成長していくのも,そんなストレスを乗り越えていくからです。家庭の中で,お子さんの新しいクラスの話や友人の話を取り入れて,お子さんが何を気にしているのか,何が楽しいのかなど,家族全員で情報を共有しておくと,心理的に支えるのに役立ちます。

 さて,最近1週間(3月9日~3月15日)の感染症情報です。1週間で最も多かったのは,溶連菌感染症で71人でした。次いで,感染性胃腸炎10人,インフルエンザ9人,水痘3人,突発性発疹3人,RSウイルス感染症2人,手足口病2人,咽頭結膜炎1人,ヘルパンギーナ1人,伝染性紅斑1人でした。あいかわらず,溶連菌感染症が多いです。今が好発時期ですが,新学期を迎える4~5月も流行が拡大しやすいので,まだまだ注意が必要です。これまで溶連菌感染症についてはいろいろとお知らせしていますが,裏に詳しくまとめてみましたので,参考にされてください。

 インフルエンザは1週間毎に患者数が半減してきていて,とうとう1桁台になりました。最近はA型とB型が半数ずつ,あるいはB型の方が多くなっています。そろそろ終息に向かっていると思われますが,去年は5月くらいまで患者さんがいました。今年は流行が早くて,しかも大きな流行でしたので,流行の終了は,去年より早くなるかもしれません。来月の通信で,流行状況や終息したかどうかをお知らせしますね。感染性胃腸炎については,ノロやロタなどのウイルス性胃腸炎がほとんどですが,あまり大きな流行にならずにすんでいます。インフルエンザや溶連菌感染症が広く流行したために,皆さんの感染防御に対する意識が高くて,マスクや手洗いなどを励行できているためかもしれません。嘔吐が強い時には,なかなか水分が摂れないのですが,吐き気を抑える座薬や内服薬を使用しながら,少しずつでも水分摂取することが必要です。OS-1などの経口補水液を一口ずつでもよいので,頻回に与えてください。通常の嘔吐下痢なら,嘔吐は半日から1日で治まってきます。その間に脱水にならないように,水分補給が必要です。大人は水分が摂れなくても,吐き気が治まるまでじっと耐えて,それから水分を摂ってゆけば大丈夫です。乳幼児では,脱水がひどくなると,危険な状態に陥りやすいです。昔は,嘔吐下痢症の流行期には点滴につながれたお子さんが待合室にあふれていました。吐き気止めの座薬や経口補水液が使えるようになって,点滴の頻度がかなり少なくなりました。脱水に陥ったお子さんの血管は細くなって,循環も悪いため,点滴に苦労し,3~4回も針を刺すこともあり,かわいそうでした。今は,脱水が強い人だけ点滴しますので,小児科医としては,以前と比べて楽になっています。脱水を見極めるサインは,尿が出ているか,口や舌の乾燥,顔色,うとうとして元気がないなどです。このような症状があれば病院を受診してください。このような症状がなければ,自宅で少しずつ水分を摂らせながら,経過をみても良いでしょう。年齢によっても,危険度は異なります。特に乳児は,脱水に弱いので,注意が必要です。


 5月3日(日)は当番医を担当します。救急患者の方は受診されてください。

 ゴールデンウィークのお休みは暦通りになります。

サンタ通信No188(03)裏 H27.03.18発行

    溶連菌感染症について

 溶連菌感染症というのは,A群β溶血性連鎖球菌が飛沫感染により,咽頭や扁桃に侵入し,発熱や咽頭痛の症状を呈する病気で,小児の感染症の中ではよく診る病気です。5~15歳の学童期を中心に,学校や家族で集団感染が多く,冬から春に多くなります。菌が感染してから発症するまでの潜伏期間は2~5日間で,主な症状は,発熱・咽頭痛・苺舌です。病初期に嘔吐がみられることも多いです。猩紅熱といわれますが,全身の細かい紅斑が脇の下や大腿部などにみられることもあります。これは菌の発赤毒素に対して免疫をもたない場合に出現する発疹で,昔は猩紅熱と診断すれば,法定伝染病として届け出て,入院隔離が必要な病気でした。今は,法定伝染病を廃止して,感染症法による体制がとられていますが,溶連菌感染症は,インフルエンザや水ぼうそうと同じ程度の病気として取り扱われています。

 診断は,のどの粘膜から菌を証明することですが,迅速検査ができてから,診断が楽になりました。のどをぬぐって10分で陽性・陰性の結果が判定できるのですから。それまでは,菌を培養して,数日たってから菌がいたかどうか分る状態でしたから,診断が困難で,合併症のリウマチ熱や急性糸球体腎炎に注意が必要でした。今のようにすぐに診断して治療ができると,合併症はほとんどみられなくなりました。

 治療は抗生剤(ペニシリン系かセフェム系)を1~2週間服用します。服用後24時間で,ほとんどの患者さんは解熱します。解熱しない時は,他の病気による発熱と考えます。内服治療が始まって1~2日経過すれば,他の人への感染力はなくなり,集団生活が許可されます。ただし,処方された日数分をしっかり服用しなければ,すぐに再発します。しっかり服用しても再発する場合は,兄弟間でうつしあっていたり,周りに患者さんがいて,そこから感染することもよくあります。感染力がインフルエンザのように強く,一家全員が溶連菌だったということも時々経験します。また,薬の服用が苦手なお子さんは,抗生剤を1,2回うまく飲めなかっただけで,治療に失敗して,治療後すぐに再発することがあります。普通は1週間抗生剤を服用しますが,再発する人は10日間続けてもらったり,2週間続けることもあります。治療終了後に急性糸球体腎炎を合併することが稀にあり,2週間後くらいに尿検査で確認することが多いでした。今は診断が早く,治療もしっかりできるようになったため,腎炎を合併することがほとんどなく,尿検査は必ずしも必要ではありません。心配な方は治療終了後2~3週間くらい経過した頃に,受診していただければ,尿検査を致します。自宅で経過をみられる方は,その時期に尿量の減少や眼瞼のむくみ,目で見えるような血尿が腎炎のサインとして出てきますので,このような症状に注意をしておけば良いでしょう。

    ロタウイルスの予防接種の助成が7月から?

 鹿児島市は今年から,ロタウイルスの予防接種に助成を行うことを決めました。このワクチンは口から飲むワクチンで,自費で受けることになっています。2種類のワクチンがあり,生後6~24週に2回接種する「1価」と,生後6~32週に3回接種する「5価」があります。どちらも1回目の接種は14週6日までが推奨されています。料金については,各病院で異なりますが,当院では「1価」が1回13,000円で,2回接種しますので,合計26,000円,「5価」は1回 9,000円で,3回接種しますので,合計27,000円とほぼ同金額になっています。新聞報道によると鹿児島市は1回当たりの金額の4割を助成する事業を予定していて,7月実施をめざしているようです。伊佐市や錦江町などは全額助成しています。鹿児島市の4割という微妙な金額が,自費のワクチンを受けようか迷っている人にとっては,悩ましいところです。もっとも,市の方でも年間出生者の半数にあたる2900人分を見込んでいるとのことですので,半数の人は自費で6割払うワクチンは受けないだろうと予想して,予算を組んでいるわけです。その予想をくつがえすくらい,大多数のお子さんにワクチンを受けさせてあげたいものです。小さな赤ちゃんが,嘔吐や下痢で苦しむのはかわいそうですよね。