サンタ通信No186(01)表 H27.01.18発行

  明けましておめでとうございます

 今年もよろしくお願い致します。皆様,お正月はいかが過ごされましたか?自宅でのんびりとリラックスして過ごされた方や,家族で帰省したり,旅行したりで忙しかったという方もいらっしゃるでしょう。私は,フィリピンのセブ島で年末年始を過ごしました。飛行機とホテルを8月には予約完了していましたが,その時に取っていたチケットは,鹿児島・ソウル・セブの乗り継ぎがスムーズな便で,7時間足らずで鹿児島からセブ島に着く予定でした。ところが,10月に入ってから,航空会社から時間の変更による,キャンセルの申し入れがあり,大慌てで,他のルートでセブ島へ行くチケットを探し,どうにか確保することができました。旅行にはいつもトラブルがつきものですね。

 さて,最近1週間(1月5日~1月11日)の感染症情報です。1週間で最も多かったのはインフルエンザで83人でした。次いで,溶連菌感染症28人,感染性胃腸炎21人,水痘11人,咽頭結膜熱4人,RSウイルス感染症1人,手足口病1人,突発性発疹1人,伝染性紅斑1人でした。昨年末に,インフルエンザが全国的に流行していましたので,年明けは注意が必要かなと思っていました。鹿児島県では年末から患者が増え始め,年明けの3日が当番医でしたが,その日だけでインフルエンザ患者は30人以上と急増していて,驚きました。その後も確実に患者数が増えてきて,現在,週83人となっています。例年と比べてみると,インフルエンザ流行のピークが1か月ほど早くなり,現在がほぼピークに近い状況です。これからの1か月間は,インフルエンザの患者数が週80~100人程度の流行が続くのではと予想されます。流行の主体はA香港型で,この型は感染力が強く,大きな流行になりやすいと言われています。また,ウイルスに変異が起こりやすいため,ワクチンの効果が弱まり,過去に大流行を起こしてきました。今は,1つの型のウイルスによる大流行ですので,一度かかると免疫ができて,今シーズンは同じ型のインフルエンザにはかからないと思われがちですが,すでに12月にA型にかかり,1月にまたA型にかかった患者さんもいらっしゃいます。A香港型とAソ連型という異なる型に1回ずつかかっている可能性もありますが,現在流行している型がほとんどA香港型ですので,同じ型に続けてかかったと考える方が妥当です。昔は治療薬がなく,インフルエンザになると高熱が5日間くらい続き,身体はそれに反応して,免疫ができて,数年くらいは同じ型のインフルエンザにはかからずにすんだのですが,現在は,早く診断ができて,特効薬を使って1日くらいで解熱しますので,免疫は十分にできません。そのため,1か月後にまた同じ型にかかってしまうということも起こります。

 A香港型の症状は,突然の高熱で始まり,小児や高齢者にとっては,重症化しやすいという特徴があります。熱が高いため,熱性けいれんも起こりやすいです。1日に何回もけいれんが起こったり,5分以上の長いけいれんになったり,けいれん後の意識障害が長く続いていたりすれば,インフルエンザ脳症の可能性がありますので,精密検査や入院治療が必要になってきます。インフルエンザの診断は発熱後12時間くらいが,検査に適していますが,40℃以上の高熱になっている時や,家族にインフルエンザの人がいる場合は,それよりも早い時間帯でも,けっこう陽性になることが多いです。病院の診療時間と発熱後の時間を考慮して,受診時間を決めましょう。いつ受診したらいいのか,困った時には電話でお問い合わせください。インフルエンザの検査で,結果が出るまでに時間がかかるため,普段より外来が込み合います。待ち時間が長く,駐車場も足りない状況で,本当に申し訳なく思っていますが,1月と2月は医師2人が休みなしで頑張りますのでご協力お願い致します。

サンタ通信No186(01)裏 H27.01.18発行

  インフルエンザ以外の感染症にもご注意を

 インフルエンザが猛威をふるっている今,他の感染症があまり目立たないのですが,表のページに最近1週間の感染症情報として挙げたように,溶連菌感染症,感染性胃腸炎,水痘,咽頭結膜熱,RSウイルス感染症,手足口病,突発性発疹,伝染性紅斑と多岐にわたって様々な感染症が流行しています。統計には出てきませんでしたが,おたふくかぜの患者さんもいらっしゃって,今の小児科外来は,どこにどの患者さんを隔離するべきか,頭を悩ましている状況です。そんな感染症が多いこの時期にも,予防接種の患者さんはたくさん来院されますので,なるべく感染症の人と接触させないように,とても気を遣います。ところで,溶連菌感染症はずっと流行が続いています。溶連菌が陽性に出ても,ただの保菌者であって,発熱の原因は別にあり,インフルエンザだったり,アデノウイルスだったりします。のどが赤くて,発熱していて,溶連菌が見つかれば,抗生剤での治療をしますが,溶連菌だけの原因であれば,1日間服用しただけでほとんどが解熱します。もし,翌日も高熱が続く時には,別の感染症を詳しく調べる必要が出てきます。

 感染性胃腸炎もこの時期は多いです。ノロやロタといったウイルスによる嘔吐下痢症がほとんどです。嘔吐が強い場合は,点滴が必要になりますが,たくさんのインフルエンザの患者さんとは接触しないようにしなければなりませんし,点滴に数時間かかりますので,インフルエンザに感染することがないように祈りながら,点滴の指示を出す毎日です。経口補水液が発売されて,点滴する回数は減りましたが,それでも嘔吐が強く,顔色が青白い場合は,点滴する方が安心できる治療法です。患者さんにはマスクをしてもらい,少し離れた場所で点滴をしています。

 水痘やおたふくかぜは大きな流行はありませんが,時々みかけます。どちらもワクチンを2回受けると,予防効果は高いですので,是非受けられてください。特に,3~4歳が受けられる水痘ワクチンの経過措置は今年3月いっぱいです。まだ水痘にかかっていなくて,1回も水痘ワクチンを受けていない人で,対象年齢ならば,急いで受けるようにしてください。せっかく無料で受けられる予防接種を無駄にしないようにしてください。

  学生実習にご協力を

 ここ数年,診察室で白衣を着た若者をみかけたことがあるかもしれません。医学部の5年生が月に1人くらいのペースで,病院実習に来ているのです。普通の医学部の実習は,大学病院や市立病院などの大きな病院の小児科で実習をするのがほとんどでした。しかし,小児科を志す者は,将来そのような大きな病院で勤務するか,開業して自分のクリニックで働くか大きく2つに進む道が分かれます。そのため,開業した小児科を体験させることで,きつくて儲からない印象のある小児科ですが,実際の開業医の仕事が,どんなに楽しいか,充実しているのか,学生に見てもらうと,小児科は面白そうとか,働きがいがありそうとか,プラスに考えられるようになり,小児科へ入局する学生が少しずつ増えてきているようです。同じ志を持つ者が増えてくるのはとても嬉しいことです。少子化で小児科医の将来を悲観する人もいますが,仕事はまだまだたくさんあります。学生の実習は,患者さんにとっては,ご迷惑をかけることがあるかと思いますが,その学生達が小児科医になってくれることで,長い目でみれば子ども達にとってありがたいことだと私は思います。お子さんの発疹をみてもらったり,ゼイゼイする呼吸音を聴診してもらったり,健診の時に身体計測をしてもらったり,と患者さんに触れあう場面も多いと思います。その時にはどうぞその意義を認め,ご協力いただけたら幸いです。