サンタ通信No191(06)表 H27.06.18発行

 梅雨の災害に注意しましょう梅雨の災害に注意しましょう

 梅雨前線が鹿児島の上空に停滞して,雨の日が多くなりました。この時期は豪雨になることも多く,洪水や土砂災害が起こりやすくなります。自分の住んでいる場所を客観的に判断して,もしそのような災害が起きそうな時に,どう行動するか,普段から考えておくことが必要です。当院でも,和田川があふれた時は,病院の2階を一時的な避難場所にしたいと考えています。また,患者さんが駐車場から病院玄関まで,雨の中で赤ちゃんを抱いて走る姿を見かけると,申し訳なく感じてしまいます。病院玄関まで車を乗りつけて,お子さんを病院に預けた後,駐車できるように設計できていれば,雨の日の悩みが少しは解消できたのでしょうが,残念ながら,病院を建てる時に,そこまで気がつきませんでした。自分が診察するのにどういう配置が良いかなど,室内のことは,いろいろ検討しましたが,駐車場から玄関の流れは,普通に歩くことしか考えられませんでした。雨が激しい日にはタオルなど用意しています。お子さんが濡れてしまった時は,遠慮なくタオルをお使いください。また,時間帯によっては,駐車場が込み合い,規定の駐車スペースだけでなく,病院入口に車を停めて,通行の邪魔になってしまう事案も起こっています。駐車場整理員がいなくて,皆様に迷惑をおかけしますが,駐車場が満杯の時は,道路側で待っていただき,1台ずつ出車する毎に,1台が入るようにしていただけたらと思います。お子さんが病気の時には慌てますが,心の余裕は大切ですよね。

 さて,最近1週間(6月8日~6月14日)の感染症情報です。1週間で最も多かったのは,溶連菌感染症で67人でした。次いで,感染性胃腸炎15人,手足口病5人,ヘルパンギーナ4人,伝染性紅斑4人,咽頭結膜熱2人,突発性発疹1人でした。あいかわらず,溶連菌感染症が多く,発熱と嘔吐で受診される患者さんの多くに,溶連菌が陽性に出ます。昨年から大きな流行が持続していて,感染を繰り返している方も多いです。飛沫感染や接触感染で伝染します。流行期では兄弟への感染は50%,親への感染は20%で,その半数以上が発症すると言われています。好発年齢は2~10歳で,4~6歳がピークになります。主要症状は,発熱とのどの痛み,発疹などです。典型的な例では,高熱と嘔吐,腹痛をきたし,発病3~4日で苺舌がみられるようになり,回復期には手足の指先に皮膚がボロボロとはがれる落屑(らくせつ)という現象がみられます。のどの所見は,のどの奥が赤くなって,点状の赤い斑点がみられます。発疹は,細かいあせものような発疹で,全身にみられます。診断方法は,発熱やのどの所見から溶連菌を疑った時に,のどを綿棒でぬぐって検査すると,10分で結果が判ります。この迅速検査が可能になって,診断が簡単になり,報告数も増えていますが,現在の流行はこれまでにない,長期の大きな流行ですので,注意が必要です。治療は,抗生剤を1~2週間服用します。服用後24時間経過すれば,感染力はほとんどなくなり,通学・通園が可能になります。合併症として治療後1~2週間して急性腎炎を起こすことがまれにあります。尿量が極端に少なくなり,足や顔のむくみが出現します。この急性腎炎については,数十年前はありふれた病気でした。今は,診断が早くて,治療が的確にできているため,急性腎炎と診断することがほとんどありません。私も10年以上患者さんをみていません。それでも心配な方は,溶連菌感染症と診断された後に2~4週間後の検尿をしておくと安心できますので,どうぞ,検査に来院されてください。毎月のように繰り返して溶連菌に感染する人もいます。診断が早くて,治療もすぐに行われるため,溶連菌に対する抗体ができずに,何回も罹患するのですが,抗体を上げるために,あえて治療しないでおくのは,合併症を起こしやすくなるので危険です。毎回しっかり治療しながら,なるべく菌をもらわないように,マスクや手洗いをしっかりするようにして,予防を心がけてください。


 7月26日(日)は当番医を担当します。救急患者の方は受診されてください。

サンタ通信No191(06)裏 H27.06.18発行

 ロタワクチン補助事業が7月から始まります

 鹿児島市で7月1日からロタウイルスワクチン補助事業が始まります。4月号のサンタ通信でお知らせしましたが,いよいよ来月から始まります。このロタワクチンには1価と5価の2種類があり,5価の方がたくさんの種類が入っていて,効果が強いという噂もあるようです。しかし,ワクチンの内容は,5価はウシ由来のワクチンですので,体内に入ってからの増殖は期待できず,接種に多くのウイルス量と回数が必要になります。反対に1価はヒト由来のワクチンのため,体内に入ってからウイルスが増殖する特徴があり,5価と同じくらいの効果を持つのです。ですから,どちらを使っても,現時点では効果に差はないと考えてください。公費負担額(割引額)は1価が6,000円,5価が4,000円です。鹿児島市の方で,当院で受ける場合は1価が1回7,000円,5価は1回5,000円で受けられることになります。

   1価(ロタリックス)料金:1回7,000円×2回=総額14,000円(自己負担金)

   5価(ロタテック)料金 :1回5,000円×3回=総額15,000円(自己負担金)

 このワクチンは任意接種ですので,対象年齢の方に通知はされません。受けたい人は,個別に病院に予約を入れ,病院に予診票が配布されていますので,その予診票で受ける形になります。接種時期は1価が生後6週~24週までに2回接種,5価が生後6週~32週までに3回接種となっており,どちらのワクチンも,初回接種を生後14週6日までに行うようにと推奨されています。この時期を越えて接種すると,腸重積を発症するリスクが高くなるという報告があるためです。初回接種の時だけでなく,ワクチン接種後7日以内に腸重積を発症することが稀にあります。嘔吐や血便の症状があれば,病院を受診してください。腸重積は緊急の処置が必要ですので,そのような症状があれば,急いで医療機関を受診しましょう。そのような危険性を解消するために,鹿児島市の事業でも15週未満で初回接種をするように規定されています。2回目,3回目の接種間隔はそれぞれ4週間以上あけます。体調が悪くて2回目や3回目がそれぞれ24週,32週を超えてしまった時は,受けられなくなります。

 小児科と耳鼻科の違い小児科と耳鼻科の違い

 「お子さんが鼻水が出るので耳鼻科を受診して治療しました」という情報をよく経験します。小児科と耳鼻科のどちらを受診した方がよいのか,迷われる場合も多いでしょう。そんな場合に,子どもの病気を総合的に診るのが小児科であって,耳や鼻の領域に関わる病気を診るのが耳鼻科だということを忘れてはなりません。咳や鼻水などのカゼ症状があれば,まずは小児科で全身状態を診ることが大事です。隠れた病気がないか,今の病状がどれくらいのものかを診断して,治療を始めます。耳鼻科受診が必要になるのは,耳を痛がる時や,きたない鼻水が長く続く時,耳鼻の異物,鼻アレルギーなどが対象になります。これまで中耳炎で何回も通院している場合は,カゼ症状で最初から耳鼻科を受診するのも良いでしょうが,鼻やのどの症状だからと赤ちゃんを耳鼻科に受診させると,重い病気を見逃す可能性があります。乳幼児のカゼ症状は,まず小児科受診を考えてください。もちろん,耳鼻科の先生でも,小児の病気を広く知っていて,正しく診断し,的確な治療ができる先生もいらっしゃいます。しかし,小児科医はそんな病気の治療を専門にしていますので,これは入院で診た方が良いとか,急に病状が悪くなりそうな時には,正確なアドバイスができるのです。

 アメリカでは,小児科医が中耳炎の治療もします。小児の病気はすべて診るという体制ができていますので,鼓膜を切開する技術も若いうちに習得しています。日本では,お互いの領域を研修するという制度がなく,いわゆる小児科は小児科,耳鼻科は耳鼻科だけの修練をしてゆくという縦割りの社会になっています。患者さんのために,自分の診療の幅を広げたいと思っても,そんな時間的な余裕はほとんどありません。私の場合は,小児科医になって1年目の時に,国立指宿病院で働いていましたが,午後の空いた時間に,外科の先生から,麻酔の勉強をしませんかと誘われました。手術室で,麻酔の仕方や血圧のコントロール,出血に対する治療など,現場で手取り足取り教えてもらいながら,毎日のように指導していただきました。この経験が,以後の自分の診療に本当に役立ちました。子どもが呼吸困難で救急搬送されてくれば,スムーズに気管内挿管の処置ができましたし,ショックを起こした患者さんにも,的確に処置ができるようになりました。こんな経験は,それ以降はほとんどありませんでした。市立病院でも長く働きましたが,他の科の治療を経験することはなく,自分が診断した患者さんの緊急手術の時に,その手術を見せてもらうくらいのものでした。昔の先生は,若い医師に対して,積極的に育てていこうという気持ちが強かったのだと思います。しかも1年目のまだ何もできない医師がかわいそうで,教育の手を差し伸べてくれたのかもしれません。