サンタ通信No184(11)表 H26.11.18発行

  溶連菌感染症が流行中

 めっきり寒くなってきましたね。晩秋の季節は,何となく心まで寒くなりがちですが,それに負けないように,クリスマスや年末年始のイベントに思いを馳せながら,心を弾ませたいと思います。若い頃は,忘年会が週2~3回くらいのペースで,医局や病棟,関連病院などの忘年会に誘われて,忙しい季節でした。飲み過ぎに注意しながら,天文館に頻繁に出ていました。最近は,さすがに天文館まで出て行くことは少なくなりました。

 さて,最近1週間(11月10日~11月16日)の感染症情報です。1週間で最も多かったのは溶連菌感染症で43人でした。次いで,感染性胃腸炎8人,手足口病4人,ヘルパンギーナ3人,RSウイルス感染症2人,水痘2人,伝染性紅斑2人,咽頭結膜熱1人でした。溶連菌感染症が依然として多いです。冬に向けて,まだ流行は続きそうです。これからインフルエンザも流行が始まりますし,発熱で受診した際に,溶連菌感染症とインフルエンザの2つの病気をいつも考えて診療することが必要になります。昨年の冬も,インフルエンザと診断後,タミフルで治療しても解熱しないため,再診した時に溶連菌感染症の診断ができて,抗生剤を内服してようやく解熱した症例や,反対に溶連菌感染症の診断後に,解熱しないため,インフルエンザを検査して陽性がわかった症例が多かったです。今年も12月に入るとインフルエンザが増えてくると予想されます。診断ができて治療した時に,改善がみられない場合は,早めに病院を再受診することが大切です。

 溶連菌感染症以外の疾患については,感染性胃腸炎(嘔吐下痢症)が多くなってきました。この病気は細菌によるものとウイルスによるものを含めた数ですが,今は病原大腸菌やサルモネラ菌,カンピロバクター菌など,鶏刺しや生卵などの食品に存在する細菌による胃腸炎は少なく,ノロウイルスやロタウイルス,アデノウイルスなどのウイルス性胃腸炎がほとんどです。症状は嘔吐で始まり,少し遅れて下痢がみられます。治療は嘔吐を抑える薬と整腸剤で様子をみますが,水分が摂れない時には,点滴が必要になります。家庭で水分補給をする時に,薬局に置いてある経口補水液OS-1を飲むようによく勧めます。嘔吐下痢で失われるナトリウムやカリウムなどの電解質を点滴と同じレベルで含有しているからです。ポカリスエットなどのイオン飲料は,元々スポーツ時の水分補給のために作られたため,OS-1に比べ,電解質の含有量が低く,糖分が多くなっています。子どもの嘔吐下痢症の時に飲ませるのであればOS-1の方が適しています。味見すると,かなりしょっぱく感じるのですが,脱水に陥った子どもは結構飲んでくれます。飲ませ方は10mlくらいを数分置きに飲ませ,嘔吐せずにうまく飲めるようなら,量を少しずつ増やします。必要な水分量は1日量として乳児で体重あたり30~50ml,つまり10kgの子どもなら300~500ml,幼児では300~600mlくらいが目安です。吐き気止めとしては,内服薬と座薬があります。嘔吐が強い時は座薬の方が確実に効果があります。内服薬の場合は,服用後すぐに嘔吐すると,全く効きませんし,少し時間が経ってから嘔吐した場合も,どのくらいの効き目が残っているかが不明で,すぐに再服用させるか,次の服用まで待った方がいいのか判断が難しくなります。ただし,座薬にも弱点があります。下痢が強いと,入れてもすぐに出てくることがあります。5分以内にそのままの形で出てきた場合は,ほとんど吸収されていないので,再度座薬を使うことができますが,それ以上経ってから形が崩れて出てきた場合は,4,5時間くらい待って,まだ嘔吐がある時には,再度座薬を入れるようにしましょう。

11月24日(月)振替休日は当番医を担当します。年末年始は12月28日(日)~1月4日(日)が休診となります。1月3日(土)は当番医を担当します。救急患者の方は受診されてください。

サンタ通信No184(11)裏 H26.11.18発行

  予防接種について

 水痘ワクチンが定期接種化されて,無料接種が始まりました。もう受けられましたか。3~4歳のお子さんは,これまで受けていない人に限り1回だけの無料接種で,来年3月までの期限付きになります。忘れないように受けてくださいね。1歳から3歳未満のお子さんは,合計2回接種を受けられます。6か月から12か月の間隔を空けて,接種します。もし,それまでに任意(有料)で水痘ワクチンを受けていれば,その回数も加算されます。当然,水痘にかかった人は,ワクチンは不要です。接種券が送られてきても,使用しません。水痘と同時に,大人用の肺炎球菌ワクチンも定期接種に指定されました。TVでも西田敏行さんが盛んに宣伝しているのを観ます。でも,水痘ワクチンの宣伝は観たことがありません。新たに定期接種になって,無料で受けられるようになったのですから,薬品メーカーからの宣伝ではなく,国の方からも,新しいワクチンの情報発信をしてほしいものです。

 水痘と同じくらいに,私たち小児科医が受けてほしいと願うワクチンの中に,おたふくかぜとB型肝炎,ロタのワクチンがあります。これらはまだ,任意接種で有料ですが,厚生労働省の予防接種部会ではこの2つのワクチンも定期接種化が望ましいとされています。しかし,品質や財政の検討が必要で,無料化はもう少し先になりそうです。要するに,「自分で接種したい人はどうぞ受けてください。残念ながら,国には無料化する計画が現時点ではありませんから」と言っているようなものです。自治体の中では,独自にこれらのワクチンに対し,助成を行うところも出てきています。ちょうどヒブワクチンや肺炎球菌ワクチンを有料で受けていた頃,鹿児島市が全国に先駆けて助成を始め,その後,定期接種化されて無料になったのと似ています。でも,今のところ鹿児島市は,おたふくかぜ・B型肝炎・ロタのワクチンについては,残念ながら助成をするという計画はなさそうです。

 住民の要望で,自治体は動きます。子ども達の健やかな成長を願ってワクチンを受けたい気持ちを,しっかり行政に届ける必要があります。市長や市議会議員などの選挙の時に,どういう政策を推進してくれるのかを見極めて,投票することもできます。投票に行っても,何も変わらないと諦めるのではなく,自分たちが住み良い環境を作ってくれる人を選べる権利を持っているわけですから,行使しなければもったいないです。また,議員や市長も,常に住民の声を拾い上げる姿勢を忘れてはいけないと思います。日本の方向を決める国会議員や中央省庁の役人たちは,財政健全化を叫んではいますが,予算は約100兆円で,それをまかなう収入は,半分の50兆円余りしかありません。残りは新規国債を発行して,借金で支払っています。今の予算の4分の1を占める25兆円は,過去の国債を返済するお金,つまり借金の支払いです。借金を25兆円分返しながら,さらに50兆円の借金をしているのが,今の日本の現状です。景気が良くなれば,そんな借金は返せるという人もいます。しかし,少子高齢化が今後も進み,社会保障の費用だけがどんどん増える状況で,好景気になるとは思えません。日銀が金融緩和策で,お金をどんどん増刷するのは円の価値をどんどん下げて,残った国債の返済をしやすくするためではと,つい穿った見方をしてしまいます。年末に衆議院が解散します。よく考えてぜひ投票へ!