サンタ通信No175(02)表 H26.02.18発行

     気分だけはオリンピック選手!

 ソチ・オリンピックが夜中にテレビで生中継されていると,つい見入ってしまいます。スキー競技フリースタイルのスロープスタイルを見ていたら,大空にジャンプして,3回転にひねりを加え,着地は後ろ向きのまま滑り降りて,また次のジャンプへ向かいます。あんなに自由に滑れたら,夢中になるだろうなと思いながらも,ボーゲンでしか滑れない私にとっては,想像もできない世界でした。でも,その技ができるようになるまで,血のにじむような膨大な練習をしているのでしょう。ところで,ほとんどの小児科医たちは,この時期に春が待ち遠しいものです。夏の外来と比べると,冬は倍くらいの忙しさになり,毎日の診療に追われます。インフルエンザの患者さんが少なくなってくるのはいつかなぁと,指折り数えながら,春を待っています。近所のモクレンの花が咲きかけているのを見たり,花壇の花が咲き始めているのを見たりすると,今年の冬もどうにか乗り切ることができたと,春の訪れに手を合わせて感謝します。2月9日は当院が当番医でしたが,この日,200人の患者さんを診察しました。2人の医師で朝9時からの当番医を30分前倒しして仕事を開始し,昼も休みなく働いて(昼ご飯を1分間で飲み込みました),夜6時に終わる予定が2時間超過の8時に終わりました。昼間は駐車場に入りきれない車が,100mくらい延々と連なっていたようです。私は外を見る時間は全くありませんでしたが。この日の当番医が以前のように私1人だけでしたら,おそらく夜中までかかっていたことでしょう。小児科医2人体制にして本当に良かったです。200人の患者数でしたが診察までの待ち時間が以前より短くなったのではないでしょうか。これからも皆様が安心して受診できるような環境づくりを考えていきたいと思います。

 さて,最近1週間(2月3日~2月9日)の感染症情報です。1週間で最も多かったのはインフルエンザで78人でした。次いで,溶連菌感染症75人,感染性胃腸炎17人,水痘8人,手足口病7人,咽頭結膜熱4人,RSウイルス感染症3人,突発性発疹2人でした。インフルエンザは1月下旬から週70人前後が続いています。そろそろピークを迎えているように感じます。A・Bの型別では,今週はA型75%,B型25%の割合になっています。例年なら2月下旬から3月にかけてインフルエンザは減少してきます。3月いっぱいはまだ用心しておきましょう。インフルエンザに罹患した時は,安静と十分な水分補給が必要です。登校は発病後5日間は出席停止になります。さらに解熱後2日間(幼児は3日間)経過しているかどうかも条件を満たす必要があります。ところで,インフルエンザの治療薬タミフルが効きにくいタイプの耐性ウイルスが出てきています。吸入するイナビルやリレンザには現時点で耐性ウイルスはないようですが,小さなお子さんは,吸入ができませんので,タミフルが効かなくなったら,小児科は大混乱しそうです。タミフルがなかった10年前の世界に戻ることになるかもしれません。

 溶連菌感染症もまだ終息する気配がありません。冬から春に多い病気ですので,もうしばらくは,周囲の流行に注意が必要です。最近,子どもの感染症が次第に減ってきている中で,この溶連菌については,あまり減少する傾向がみられません。迅速検査で診断できるようになり,報告数が増えてきたことも一因だと思われます。治療はペニシリン系やセフェム系の抗生剤が良く効き,約1週間服用します。再発を繰り返す時は,10日間から2週間服用させることもあります。インフルエンザと同時に罹患しているお子さんも多く,タミフルと抗生剤を同時に服用させることも度々です。インフルエンザの鼻の検査も,溶連菌ののどの検査もどちらも,子どもは嫌がりますが,大切な検査ですので,検査の時は,お子さんが手を出さないように,おとうさんやおかあさんは,お子さんの体と手をしっかり固定してあげましょう。検査が終わった時には,よく誉めてあげてくださいね。

サンタ通信No175(02)裏 H26.02.18発行

ご意見 回答

 以前,肺炎球菌の注射を終えて,次,どうしようかと考えていたら,すぐ声をかけて頂き,他の接種の計画を立ててくれました。ずっとタイミングがつかめず,なかなか接種できていないのがあったので,すごくうれしかったです。


 お役に立てて良かったです。予防接種の種類がどんどん多くなってきて,私たちでさえ戸惑う時があります。健診や予防接種の後はなるべく,次の予定を尋ねるように心がけていますが,声かけができていない時には,どうぞ遠慮なく,ご相談ください。

 

      アレルギー性鼻炎(花粉症)

 春はアレルギーの季節です。スギやヒノキに対するアレルギーが2月から3月にかけて目立ってきます。鼻炎の患者さんにおけるアレルギー性物質(アレルゲン)を,頻度の高い順に並べてあります。そのアレルゲンがどの季節に多くなるかを併せて表示してみました。もし,毎年いつも同じ時期に,くしゃみや鼻水で鼻炎かなと感じていらっしゃる方は,その時期に何のアレルゲンがあるのかを知る手がかりになります。花粉の時期は九州の平均的な開花時期を表示しています。

 

 鼻炎かどうかは,耳鼻科での鼻の粘膜の所見や,鼻水の中の好酸球検査が重要になります。血液検査の中の特異的IgE抗体検査はアレルゲンに対してどのくらいのアレルギーの強さがあるかを数量的に測定することができますが,アレルゲンの種類は180種類くらいあって,そのうちどれが疑わしいのかが判らないと調べる事が難しくなります。治療は,抗アレルギー薬をその時期だけ服用したり,ステロイドの点鼻薬を使用します。以前,この通信で取り上げたこともありますが,花粉症を持っていると,果物に対してもアレルギー症状が出ることがあり「口腔アレルギー症候群」と呼ばれています。例えば,シラカバの花粉症の患者さんの30~50%の人が,りんごやさくらんぼといったバラ科の果実を食べると,食べて15分以内に,口の中やのどが痒くなったり,唇が腫れたりするアレルギー症状がみられます。さらには顔がむくんだり,蕁麻疹になったり,ひどい時には呼吸困難に陥ることもあります。これは,シラカバの花粉とバラ科の果実に共通の抗原が存在するためではないかと考えられています。ブタクサに対するアレルギーがある人ではメロン・バナナ・スイカなどを食べるとこのアレルギーがみられます。ヨモギではセロリを食べた時に症状が出てきます。他にキウイ・マンゴー・グレープフルーツ・ニンジン・トマト・アーモンド・ピーナッツなどに注意が必要です。果物を食べて,口の中が,イガイガしたり,口の中が痒くなった時は,花粉症の有無にも注意が必要です。詳しくは,耳鼻科やアレルギー科を標榜している病院で,診察してもらうと良いでしょう。