サンタ通信No180(07)表 H26.07.18発行

       ヘルパンギーナ流行中

 台風が鹿児島に上陸。沖縄に近づいた頃に,数十年に1度の猛烈な台風に発達すると報道されていましたので,戦々恐々としていましたが,その歩みは遅く,北上する間に徐々に弱くなっていき,上陸する時には,暴風圏が消失していましたので,ほっとしました。真夜中に1回停電しただけで済んで,良かったです。ところで,台風が上陸する3日前に,坊津でダイビングをしましたが,その時は,波は静かで,台風のうねりが少し届いている感じの海でした。しかし,ダイビングから港に帰ってきたら,港の中はロープが四方八方に張り巡らせてあり,ボートは港の中を走れない状態になっていました。すでに,漁船を守るため,ありったけのロープで,固定し始めていました。そのロープの中を縫うように岸までボートを誘導し,どうにかダイビングボートも陸揚げできました。

 さて,最近1週間(6月30日~7月6日)の感染症情報です。1週間で最も多かったのは溶連菌感染症37人でした。次いで,ヘルパンギーナ20人,手足口病6人,咽頭結膜熱3人,RSウイルス感染症3人,感染性胃腸炎2人,伝染性紅斑2人でした。ようやくインフルエンザは6月22日を最後に患者発生を認めていません。急な発熱で,周囲にインフルエンザの患者さんがいるような場合には,検査が必要と思われますが,来シーズンの発生報告までは,安心してよいでしょう。ところで,溶連菌感染症が依然として多いです。夏休みに入るまでは,このまま続くと思われます。抗生剤を服用すれば,1日で解熱し,のどの痛みも改善します。でも,治ったと感じて,治療がおろそかになりがちですが,きっちり1週間服用しなければ,すぐに再発することが多い病気です。再発する度に周囲に感染を拡げてしまいますので,元気になっても,指示されたお薬は最後までしっかりと服用させてくださいね。1週間の服用で再発した人は,抗生剤の変更や服薬期間を10~14日間と延長することを考えます。

 ヘルパンギーナの大きな流行がみられています。発熱とともに,のどの奥に赤い発赤ができます。それが小さな水疱になり,つぶれて浅い潰瘍になり,のどを痛がります。熱は38~39℃台で,2~3日間続きますが,自然に解熱します。のどが痛くて,水分や食事が摂れなくなると,ぐったりしてきますので,注意が必要ですが,機嫌が良く,食事が摂れているようなら,何も薬を使うことなく,治癒していきます。感染経路は発熱時は飛沫感染が主で,くしゃみや咳で感染します。解熱後2~4週間は便にウイルスが排出されますので,オムツ替えの時などに感染することがあります。手洗いをしっかりしましょう。手足口病も流行がありますが,ヘルパンギーナほどではありません。手足口病の場合は発熱することが少ないため,軽い印象がありますが,ヘルパンギーナと同じウイルスの種類ですので,合併症としては,髄膜炎や脳炎,心筋炎などがあります。病気の時は,無理をしないのが一番です。症状が軽い時は,集団生活を許可しますが,病気が残っている時や治った直後に,炎天下に走り回ったり,スイミングをしたりと,疲れるようなことをすると,髄膜炎を起こすことがあります。

 伝染性紅斑の患者さんが2人いらっしゃいました。リンゴ病と言われることもあります。リンゴのような頬の紅斑と手足にレース模様の発疹が出現します。発熱はほとんどありません。1週間くらいで発疹も消えていきます。あまり心配のない病気ですが,原因はヒトパルボウイルスで,私が小児科医になった頃は,まだ原因不明の病気とされていました。発疹の出始める2週間前に,微熱やカゼ症状がみられることが多く,この時期に伝染させてしまいます。妊婦さんには流産を起こすこともあるウイルスですので,周囲にこの伝染性紅斑の患者さんがいらっしゃる場合は,注意が必要でしょう。

 

お盆休みは8月14~15日が休診になります。8月31日(日)は当番医を担当します。

サンタ通信No180(07)裏 H26.07.18発行

       熱中症について

 熱中症がマスコミなどでよく取り上げられるようになりました。「熱中症で救急搬送された患者数が,1日○○人で,過去最高を記録しました。」などと国民の関心を集めるニュースになるからだと思います。確かに夏の暑さは,毎年,毎年厳しくなってきている印象があります。昔,ハワイのカウアイ島でカララウトレイルというトレッキングに挑戦したことがありました。暑い中,汗だくになりながら,2時間くらい山を歩いて,目的地に到着しました。持参したミネラルウォーターは,往路ですでに飲み終えていまい,復路は水分なしで戻らざるを得ませんでした。ふらふらになりながら帰り着き,頭はくらくら。近くに飲み水はなく,10分くらい車を走らせて,ようやく冷たいジュースを販売している車を見つけて,水分をたっぷり飲むことができました。熱中症の一歩手前の状態だったようです。

 熱中症とは,高温多湿な環境の中,体内の水分と塩分のバランスが崩れたり,体温の調節機能が破綻することによって起こる障害のことです。人間はじっとして動かない時も体温は36~37℃に調整されています。運動をすると,筋肉が熱を発生させ,体温を上げようとしますが,汗を出して,汗が皮膚から蒸発することで,気化熱として熱が奪われ,体温を下げてくれます。運動して,水分を摂らなければ,汗をかくことができなくなり,体温は上昇するばかりで,熱中症が起こります。

 熱中症の重症度はⅠ,Ⅱ,Ⅲ度に分類されます。一番軽いⅠ度は,めまい・失神(立ちくらみ)が起こります。筋肉の痛みや硬直(こむらがえり)を起こすこともあります。大量の発汗が見られます。この時の対処は,涼しい所で安静にさせ,水分を補給させるようにします。Ⅱ度はさらに重くなり,頭痛や気分不良,吐き気が出てきて,体がぐったりしたり,力が入らなくなったりする状態です。このような場合にも,涼しい所で安静にさせ,水分を補給をさせますが,口から飲めない時には,点滴で水分補給をします。Ⅱ度では,病院を受診させることが必要です。体を冷やすことも大事ですが,この時点ではまだ,体温調節機能は失われていませんので,濡れたガーゼやペーパータオルを体に張り付け,扇風機やうちわであおぐような,急速冷却はまだ必要ありません。Ⅲ度は,体温調節機能が破綻した状態ですので,意識障害・けいれん・高熱がみられるようになります。意識障害やけいれんの場合は,救急車を呼びます。一刻も早く点滴と前述した急速冷却を行います。

 子どもと高齢者は熱中症に弱いと言われます。子どもは,体温調節が大人と比べ,うまくできません。同じ運動をしても,子どもの方が大人より多くの熱を産生します。発汗するスピードも子どもは遅いです。子どもは体重あたりの体表面積が大きいため,環境温度の影響を受けやすいです。車に子どもを放置して死亡させるケースが報道されますが,子どもの特性について,いろいろ知っていれば,暑い中,子どもを放置することは絶対にしないはずです。また,高齢者では,皮膚の温度感受性が低くなり,暑さに対する体温調節が遅れやすいということと,発汗量も少なくなるため,高熱になりやすいといわれています。加齢に伴い,のどの乾きを感知しにくくなり,夜間の尿量が増え,脱水や電解質異常を起こしやすいので,熱中症に陥りやすくなるわけです。

 スポーツで起こる熱中症については,学校管理下で起こった日本スポーツ振興センターの資料によると,野球での事故が最も多く,ラグビー,サッカー,柔道,剣道,山岳,陸上となっています。当然,男性がほとんどを占めます。運動における熱中症を防ぐには,普段からバランスの良い食事をしっかり摂り,十分な睡眠をとること,帽子で直射日光を避け,熱を放散しやすいゆったりとした服装,十分量の水分を準備することなどが挙げられます。