サンタ通信No179(06)表 H26.06.18発行

       梅雨の晴れ間

 梅雨に咲くアジサイが,きれいに青や紫の花を咲かせて,今,満開です。それにしても,雨の日が少ないですね。関東地方には強い雨が降ったようですが,鹿児島の方は,空梅雨の様子です。予想では,エルニーニョ現象の影響で,梅雨の季節の進みが遅く,6月上旬は晴れが多く,下旬には雨が多くなり,7月になってさらに雨が多くなり,豪雨になる所も出てきそうと言われています。梅雨明けも遅くなりそうです。例年,梅雨の終わりには,大雨で災害が起こることが多く,シラス台地に暮らす鹿児島県民としては,とても心配です。

 さて,最近1週間(6月2日~6月8日)の感染症情報です。1週間で最も多かったのは溶連菌感染症35人でした。次いで,水痘6人,手足口病6人,ヘルパンギーナ5人,感染性胃腸炎4人,突発性発疹4人,インフルエンザ2人,咽頭結膜熱2人,おたふくかぜ2人,RSウイルス感染症1人でした。溶連菌感染症の流行は一時減少傾向にあったものが,最近また増加してきています。この谷山地区でも流行しているようで,まだまだ注意が必要だと思われます。完全に除菌できず,何回も繰り返す例や,兄弟間でうつし合いながら繰り返す例など,治療に苦労することも多い病気ですが,処方された抗生剤を1週間から2週間しっかり服用できれば,再発することは少ないです。学校や保育園への登校・登園は,抗生剤服用開始後24時間経過すれば,他人へ感染させるだけの菌量はなくなりますので,その時点で登校・登園を許可してします。少なくとも1週間くらいは,1日3回の定期的服薬をきっちりしないと,再発してさらに周りに流行を拡げてしまう危険性があります。小学生以上は自分で薬を服用できますが,幼児では保育園の方で,スタッフが飲ませるしか方法はありません。お昼の服薬が必要なのに,保育園などで服薬介助を認めていないところも結構あります。園の方で責任が持てないからという理由も納得できますが,他の園児に感染させないようにすることも大きな目的ですので,必要最小限の薬は是非,内服させられるようになってほしいと願っています。

 水痘は週5~6人程度の流行が続いています。水痘ウイルスに効く抗ウイルス内服剤がありますので,重症化することはほとんどなくなりました。あまりにも早期から治療をすると,発疹が全身に数個程度で済んでしまいます。そんな軽症の場合は,抗体が上がらずに,また次回の感染の機会に2回目の水痘にかかることがあります。軽く済んでほしいという気持ちと,再度かかってしまうのも嫌だという気持ちとの狭間で,ちょうど良いタイミングを見計らって,治療の指示を出すようにしています。

 手足口病とヘルパンギーナの夏カゼが,急に多くなってきました。これから夏に向かって,さらに多くなってくると思われます。裏のページに,夏カゼについて簡単な説明の文章を載せました。参考にしてみてください。ところで,インフルエンザは今月は中旬までにB型が合計3人の患者さんがいました。徐々に少なくなってきましたので,そろそろ,今シーズンの終息と考えてよいでしょう。昨年は10月にインフルエンザが始まりましたので,今年の秋までは,インフルエンザシーズンは小休止というところでしょうか。咽頭結膜熱(プール熱)は2人と少ないのですが,これから夏に多くなる病気です。高熱が続き,眼の充血と目やにを伴います。のどを綿棒でぬぐって迅速検査すれば,その場で診断がつきます。この病気は,アデノウイルスにより引き起こされます。特効薬はありませんが,全身状態が悪くなる人は少なく,入院になった例は少数です。このウイルスは,感染力が強く,解熱した後も2日間は集団生活ができません。感染は飛沫感染と目やにを介しても感染しますので,タオルの共用は避けて,手洗いをしっかりしましょう。

 

お盆休みは8月14〜15日が休診になります。8月31日(日)は当番医を担当します。

サンタ通信No179(06)裏 H26.06.18発行

       夏カゼの季節

夏カゼというと,手足口病はよく耳にしますが,もう一つの夏を代表する疾患が,ヘルパンギーナです。この2つの病気は同じエンテロウイルスにより起こる病気で,同じウイルスでも,病気の症状はいろいろなタイプがあり,発熱とのどの炎症が主体のヘルパンギーナ,手足に発疹が出る手足口病,全身に発疹が出るウイルス性発疹症,嘔吐・下痢の症状を起こす急性胃腸炎などがよくみられる病型です。

 手足口病はコクサッキーウイルスA16とエンテロウイルス71というウイルスにより起こることが多く,コクサッキーウイルスもエンテロウイルスの中に含まれます。発熱は37℃台の微熱が時々出ますが,多くの患者さんは発熱がなく,手足の水疱と口の中の口内炎(小さな潰瘍)がみられます。乳幼児に多い病気で,5歳以下が80%,2歳以下が半数を占めます。夏に発生のピークがありますが,秋にもよくみられます。感染経路は,病初期には口の中にいるウイルスが,くしゃみなどの飛沫感染により,周囲に拡がります。全身状態が改善した後も,便中にウイルスは長期間排出されます。長い時は1か月くらい出ることもあります。お子さんのおむつを替えたり,便が手に付着した時は,よく手洗いをされてください。

 ヘルパンギーナは,A型とB型のコクサッキーウイルスとエコーウイルスによる咽頭炎で,これらのウイルスを総称してエンテロウイルスと言います。突然の高熱とともに,のどの奥に小水疱ができ,潰れて浅い潰瘍になります。このため,のどの痛みが強く,食事や飲水ができなくなり,脱水状態になることもあります。発熱は38~39℃で,3日以内に解熱するのがほとんどです。この間に全身状態が悪くならなければ,自然に軽快する病気です。毎年7月をピークに,6~8月に多くみられ,1~4歳代の幼児に好発します。口の中の小水疱ができる場所は,口の中の一番奥です。口の前半分にできれば手足口病,奥半分にできればヘルパンギーナと,2つの病気を区別するポイントになります。感染経路は手足口病と同じです。治療方法はどちらの病気も特になく,自然に良くなるのを待ちます。

 しかし,これらのエンテロウイルスによる病気の場合に,まれに髄膜炎や脳炎などを合併しやすいウイルスが存在します。特に,エンテロウイルス71では重症化しやすいことが知られています。夏カゼで,高熱が続き,頭痛や嘔吐がみられる時は,髄膜炎を起こしている可能性があります。これまで,世界中で手足口病から髄膜炎・脳炎を合併し,死亡するような重症患者の発生がいくつも報告されています。1997年にマレーシアで30名以上,日本でも3人の死亡者が報告されており,1998年には台湾で55人が死亡しています。最近の例では,大分県で2008年夏にある高校で集団感染がありました。手足口病の原因ウイルスであるエコーウイルスにより,全校生徒782人中30数人が感染し,そのうち,11人が髄膜炎を発症して,入院しました。幸い,重症患者は出ずにすんでいますが,このように髄膜炎を起こしやすいタイプのウイルスが流行してしまうと,鹿児島県にある小児科用入院ベッドはすぐに不足してしまいます。市立病院に勤めていた頃に,外来で毎日10人位の髄膜炎の患者さんを,重症度で区別し,重症の人だけ入院させ,軽い人は外来で点滴治療しながら,どうにか乗り切った思い出があります。そんな大流行は来てほしくありません。