サンタ通信No181(08)表 H26.08.18発行

       夏休みは楽しかった?

 皆さん,夏休みがそろそろ終わります。お子さん達が楽しかったと満足するようなお休みになりましたか?私は,7月の早い時期に南米へ旅行したため,お盆は自宅で過ごしました。この時期は,帰省客がどこもいっぱいです。お墓参りしたくても,車は山の麓で乗り入れ禁止になります。年老いた親に坂道を歩かせるわけにもいかず,実家で線香をあげることくらいしかできませんでした。その時に,親から古いアルバムを渡され,そこの写真を取り込んで,デジタルフォトアルバムに移し替えてほしいと頼まれました。昭和20年から30年代の写真はとても懐かしく,お盆に昔を振り返る良い機会になりました。家族そろって,宮崎の子どもの国に行って,遊園地の電車に乗ったことや,町内会で霧島に1泊旅行したこと,自宅で父親が仕事仲間との飲み方を夜遅くまでしていたことなど,懐かしい思い出がよみがえりました。私の父親が亡くなって,すでに44年になります。父の記憶もおぼろになってきていましたが,古い写真がその頃の記憶を呼び覚ましてくれました。そんなエピソードのおかげで,今年は,ちょっぴりお盆らしく過ごすことができました。

 さて,最近1週間(8月4日~8月10日)の感染症情報です。1週間で最も多かったのはヘルパンギーナで14人でした。次いで,溶連菌感染症12人,咽頭結膜熱6人,手足口病4人,水痘2人,突発性発疹2人でした。夏休みに入り,感染症はかなり流行が抑えられて,全体に患者数が少なくなりました。そのため,小児科の外来はのんびりムードで,土日が少し忙しいですが,平日は待ち時間はないです。ヘルパンギーナも,髄膜炎を合併するような重症化した人もいなくて,ほっとしています。ヘルパンギーナの流行は,これから9月から10月にかけて減少していきますので,あと1か月ほど,注意していれば,大丈夫だろうと思います。

 溶連菌感染症は,常に二桁の患者数が続いていますが,減少傾向にあり,溶連菌感染症の診断を受けた人が,周りに感染を拡げないように,早期診断,早期治療を心がければ,感染拡大は防げるだろうと思います。治療開始後24時間経過すれば,他の人への感染力はなくなるとされていますが,診断される前は,ずっと人にうつしてしまっています。その期間をなるべく短くしなければ,感染は拡がります。早期診断が重要になってきます。家族に溶連菌感染症の患者さんが発生したら,他の家族にのどの痛みがないか,熱っぽい人がいないか,など十分な注意をしておきましょう。

 咽頭結膜熱が週6人と多くなっています。プール熱とも言われますが,昔,プールでの感染が多かったため,この名前がついています。今は,衛生管理がしっかりしているため,プールの水を介して感染することはなくなりました。ただ,タオルやビート板などの共用で感染することがありますので,注意が必要です。アデノウイルスによる感染症は,患者の唾液やくしゃみでうつる飛沫感染と,患者が触れたタオルなどを介して感染する接触感染の両方があり,どちらも感染力は非常に強いです。私たち医師も,結膜炎を伴った患者さんを診察した後は,手洗いを励行しています。感染してから3~5日で発熱,咽頭痛,結膜炎などの症状がみられるようになります。登園開始は,解熱後2日間経過してからですが,その後も長期にわたり,便にはアデノウイルスが排出されますので,治った後も手洗いは重要ですし,タオルも共用しない方が良いでしょう。例年,流行のピークは6月~8月ですので,秋にかけて次第に患者数が減少していきますが,病気に関係なく,食事の前の手洗い,トイレの後の手洗いは一般的な習慣としてお子さんには習慣づけるようにしましょう。また,残暑の季節は,夏の疲れが出始める時期です。2学期に向け体調管理をしましょう。

 

8月31日(日)は当番医を担当します。

サンタ通信No181(08)裏 H26.08.18発行

       水痘ワクチンの公的補助

 10月1日から水痘ワクチンが定期接種になります。このため,対象のお子さんには,鹿児島市の方から予診票を個別に通知することになっています。接種対象者は,生後12か月から36か月に至るまでの間にある者ということで,1歳から3歳未満のお子さんが対象になります。水痘ワクチンを3か月以上の間隔をおいて2回接種しますが,標準的な接種は初回を生後12か月から15か月で受け,追加接種を初回終了後6か月から12か月で受けます。また,26年度(来年3月まで)に限り,経過措置として,生後36か月から60か月に至るまでの間にある者を対象に1回接種することができます。これらの接種は,すでに水痘にかかった者は対象外になります。また,これまでに任意接種として水痘ワクチンを接種していれば,すでに接種した回数分の接種を受けたものとみなすことになっています。つまり,これまでに2回任意接種を受けていれば,定期接種も経過措置での接種も受ける必要はなく,任意接種を1回だけ受けていれば,定期接種をもう1回受けることができ,経過措置にあたる人は,受ける必要はありません。1回も任意接種を受けていない人は,定期接種を2回,経過措置であれば今年度中に1回受けることになります。任意接種や経過措置など,条件が複雑なため,少し紛らわしいですが,不明の点は当院スタッフまで,ご遠慮なくお声をかけください。この水痘ワクチンがすべての子ども達に接種されるようになれば,水痘もほとんど流行はなくなるだろうと思われます。10年後が楽しみです。

       アフリカで流行中のエボラ出血熱

 今,中央アフリカ,西アフリカで流行しているエボラ出血熱は,私が医学部で勉強していた頃は,その名前を聞いたことがありませんでした。この病気が特定されたのは,1976年で,スーダンの小さな町で,1人が全身の消化器や鼻から激しく出血し,死亡しました。近くにいた人が同じような症状で発症し,感染者284人,死亡者151人という流行がみられました。この病気は,アフリカの風土病のように思われていましたが,ウイルスが原因だと判明し,この地域を流れていたエボラ川の名前をとって,エボラウイルス,病気はエボラ出血熱と命名されました。ダスティン・ホフマン主演の『アウトブレイク』という映画を観た時に,全身の出血を起こして死亡する,致死率の高いモターバ・ウイルスに恐怖を感じました。この映画で出てくる「モターバ・ウイルス」は架空のウイルスですが,このエボラ出血熱に近い病気として描かれています。ちょうど,この映画が公開された1995年にも,ザイールでエボラ出血熱が流行しました。この病気は,新型インフルエンザなどと違い,空気感染しないため,世界的な爆発的流行はしないのですが,全身出血しやすく,その血液や体液を介して接触した人が感染します。患者が死んだ後も感染力があり,アフリカで流行がコントロールできないのは,死者を葬る時に,周囲の人が遺体に触れる風習があるのが原因のひとつと考えられています。今回の流行は,ギニア・シエラレオネ・リベリア・ナイジェリアの4カ国で,1975人が感染し,1069人が死亡しています。現地の医療関係者も100人以上が感染し,約半数が死亡しています。現地で治療に携わっていた欧米の医師も感染してしまい,祖国に隔離されたまま,搬送されている映像を見ると,アフリカだけでなく,どの国でも流行する可能性があります。治療法がない病気ですので,とにかく流行の拡大をくい止めることに尽きると思います。また,患者に触れなければ感染しないから,安心だと思われがちですが,潜伏期が1週間くらいあるため,感染した人が,発症する前に他の人に感染させてしまうことが考えられます。現地では,人と人の接触をできるだけしない方が良さそうです。もちろん,渡航については外務省から危険情報が出されており,早めの退避を呼びかけています。アフリカはエジプトやモロッコ,南アフリカなど,旅先として魅力のある国が多いですが,今は訪問しにくいですね。映画『アウトブレイク』では,ウイルスに対する抗体を作ることに成功して,病気を封じ込めることができましたが,現実はそう簡単にはいきません。現実の世界でも,早く流行がコントロールできて,WHOの終息宣言を聞きたいものです。