サンタ通信No299(06)表 R6.06.18発行

手足口病が大流行中

 梅雨を迎え,当院の庭でも紫陽花がたくさん咲いています。きれいな花が見られるのはうれしいですが,梅雨末期には大雨による災害も起こりやすいです。大雨に対する注意は必要です。今年も大きな災害が起こらないといいですね。地球規模の異常気象が多くなった現代は,災害に対する備えも十分にしておく必要があります。

 さて,最近1週間(6月10日~6月16日)の感染症情報です。1週間で最も多かったのは手足口病で週42人でした。その他には,溶連菌感染症7人,ヘルパンギーナ6人,新型コロナ感染症2人,RSウイルス感染症1人,感染性胃腸炎1人,咽頭結膜熱1人でした。ヘルパンギーナと診断した方で,翌日に手足に発疹が出現し,手足口病だった人も数人いらっしゃいましたので,純粋なヘルパンギーナは少ないかもしれません。どちらも同じ系統のウイルスによる夏カゼですので,どちらの診断でもあまり違いはないのですが,ヘルパンギーナは高熱が2〜3日持続します。手足口病では熱がそれほど高くなくて,発熱期間も1〜2日と短めで,発熱のない方も多いです。両疾患とも治療薬は特になく,高熱があれば解熱剤を処方するくらいです。のどの奥に炎症性の水疱や口内炎ができて,食事や水分摂取を嫌がるようになることがありますので,イオン飲料や喉ごしのよい食べ物を繰り返し与えます。解熱する頃には喉の痛みも軽減してきますので,食事が普段通りに摂れるようになれば,集団生活は許可しています。夏カゼのウイルスは症状軽快後も1〜2週間は便に排出されて,感染力がありますので,お尻を触ったり,便に触れたりした時は,しっかり手を洗いましょう。

 インフルエンザはしばらく患者を診ていませんので,ようやく終息したのだと思われます。それに比べ,新型コロナ感染症は未だに増減を繰り返しています。子どもは重症化することがほとんどないため,特効薬を使うこともなく,対症療法のみで5日間自宅安静で経過をみるだけです。今は周囲にコロナの患者さんがいらっしゃれば検査をするようにしています。だんだん風邪と同じような扱いになってきて,これまでのコロナ感染症と比べて,隔世の感があります。本当にコロナ感染症が重症肺炎を起こしていた頃は,患者の家族も濃厚接触者して隔離が必要で,社会生活が制限され,県外への移動もできない状態でした。生活で制限がないことは,とてもありがたいことだと改めて思います。

 

6月30日は休診です。

7月1日,14日,21日は休診です。7月15日は当番医です。

8月5日〜15日は休診です。16日(金)は診療します。

 

サンタ通信No299(06)裏 R6.06.18発行

手足口病について

 この病気は,幼児を中心に,夏に流行が見られるウイルス性疾患です。2歳以下の小さなお子さんが半数を占めます。小学生以上の年齢層の人は,既にこれらのウイルスの感染を受けている場合が多く,成人の発症はほとんどありません。たまに,お母さんが「私も手のひらにブツブツが」と見せてくださる方がいらっしゃいますが,わずかな発疹のみでそれ以外の症状はないようでした。原因ウイルスはコクサッキーA16やA6,エンテロウイルス71などのエンテロウイルスです。

 主な症状は,口の中や手のひら,足のうらなどに2~3mmの水疱性発疹が出現します。発熱については,70%くらいの人で発熱がみられず,残りの30%くらいの人は発熱しますが,38℃以下のことがほとんどです。兄弟から感染した時は,3~5日の潜伏期間で発症します。発疹は肘や膝,お尻などにも出現することがあります。ほとんどのお子さんは軽症で,1週間くらいで発疹は消えてしまう軽症の夏カゼなのですが,ごく稀に急性髄膜炎の合併が見られます。なかでもエンテロウイルス71型は中枢神経系合併症の発生率が他のウイルスより高いことが知られています。幸いなことに,今年はこの系統のウイルスの発生はまだ起きていないようです。

 治療は特別なものはなく,口の痛みのため,食事や水分が摂れなくなることがありますので,イオン飲料を少しずつ繰り返し与えて,脱水状態にならないようにすることが大事です。ウイルスは症状軽快後も便に2週間くらいは排出されますが,集団生活は発熱がなく,食事も普通に摂れて,本人の全身状態が良ければ,登園を許可します。しかし,便にはまだ2週間くらいはウイルスが排出されますので,お子さんのオムツを替えたり,便を触ってしまった時は,手洗いをしっかりしておきましょう。

保険診療の今昔

 先日,鹿児島県の小児科医会に参加した時,保険診療を確認・査定する方法が変わったという話を聞きました。私も30年前は社会保険診療報酬審査委員をしていました。市立病院の小児科医として勤めながら,仕事が終わった後に支払基金の事務所へ行き,毎月各病院から挙がってくる大量の診療報酬請求書(レセプト)の山と格闘しながら,その診療が正しく行われているのか,請求に間違いがないかを確認する作業をしていました。紙のレセプトでしたので,高く積まれた書類の山を見るたび,ため息をつきながら,事務職員がそろそろ終了の時間ですと告げる時間まで黙々と紙をめくっていました。その申請が紙からオンラインデータで送られるようになり,レセプトを基金事務所まで持って行く必要はなくなりました。さらに,審査側も送られたデータをAIがチェックして,疑わしい所を教えてくれるような時代になったとのことでした。

 診療した病名を書いて,行った検査や処方を記録して請求するのですが,これまでは小児科医ならば,この病名でこの検査や薬剤は時々使うことがあるから特に問題はないはずと判断できていたのですが,最近はやたらと査定されることが多くなり,一つずつこの検査にはこの病名,この薬にはこの病名というように,必要とされる病名が増えたなと感じていました。つまり,機械が判断するようになり,医師の裁量がなくなった影響でしょう。当然,査定されないためには,機械的に必要な病名を付けなければならないのです。この支払い基金で働く事務職員も人員整理され,AIが代わりに仕事をしています。未来の社会はどんどんこのようにAIに支配されていきそうで,コンピュータの進歩に人間が追いついていない感じがします。10年後は医師が診察はするものの,病気の診断はAIがするようになっているかもしれないですね。