サンタ通信No303(01)表 R7.01.18発行

あけましておめでとうございます

 年始めの2日が当番医の担当日になり,長期のお休みは取れず,久しぶりに自宅で大晦日,元旦をのんびりと過ごしました。十分に体力を蓄えて迎えた当番医は,朝9時から夕方6時まで指定されていましたが,朝8時には駐車場に車が並び始めていたため,朝8時過ぎから診療を開始し,休憩なしで夜10時半まで全力で働きました。ちゃんとした食事時間はなく,当番医の時の常備食であるバナナを昼2時に1本,夕方6時に1本食べただけでした。153人の患者さんを診察し,インフルエンザと診断したのは65人。他に新型コロナ感染症1人,溶連菌感染症1人,水痘1人,手足口病1人でした。発熱初期でまだ検査ができない時期の患者さんは,解熱剤で様子を見るように話し,重症の患者さんを見逃さないことだけ注意しながら,どうにか無事に終わることができました。中には1,000mlを超える点滴が必要だった重症脱水の人もいて,本当に小児救急は集中力が必要です。

  当番医のご褒美に,翌日からフィリピンのセブ島へ旅行してきした。当番医でインフルエンザに感染してしまう危険性も考えましたが,仕事を頑張れるパワーの源は,好きな旅行ですので,パスポートと水着をスーツケースに入れて,1月3日に鹿児島空港から羽田,成田から仁川,仁川からセブと3回飛行機を乗り換え,夜中にはセブ島に到着。この寒い時期でもセブ島はTシャツと短パンで過ごせます。セブ島での3泊は,ホテルの敷地から1歩も出ることなく,ダイビングやランニング,プール,夜のカクテルタイムのお酒などを楽しみ,疲れ果てた体を癒してくれました。冬でもホテルの庭にはプルメリアやハイビスカス,ブーゲンビリアなどの花々が咲き,青い海,青い空は私の心をリセットしてくれました。この時期の旅行で心配事は,空港の駐車場ではないでしょうか。鹿児島空港でも駐車場が満車で,停めるのに時間がかかります。早めに空港へ行き,空港で飛行機を眺めたり,待合室で人の観察をしたりするのも楽しみ方の一つでしょう。今回の旅でも,ほとんどの乗り継ぎ便に遅れが出ていましたので,時間がなくてバタバタするのではなく,時間に余裕をもった計画が楽しい旅を実現できます。今年も皆様に喜んでいただける診療を続けられるように,リフレッシュのための旅を計画しようと思っています。

 

1月26日(日)は休診となります。

2月9日(日)と22日(土)は休診となります。 

3月2日(日)と19日(水)は休診となります。3月9日(日)は当番医を担当します。

サンタ通信No303(01)裏 R7.01.18発行

インフルエンザ感染症について

 今流行しているのは,インフルエンザA型です。A型の中に以前はAソ連型,A香港型と2種類ありましたが,2009年にメキシコや北米で流行し、豚由来の新型インフルエンザと呼ばれたウイルスA(H1)pdm09亜型ウイルスが,今日本で猛威をふるっているウイルスです。このウイルスが最初に流行し始めた時に,感染力が強く,死亡率も高いとされ,日本の空港では,メキシコから飛行機が到着すると,健康管理調査をして,症状の出ている人は成田空港近くのホテルに隔離する防疫体制をとっていました。テレビでもよく放映されていましたから,記憶に残っている方も多いかと思います。しかし,すぐに日本国内でも流行するようになり,これまでのインフルエンザと比較して,それほど怖くないことが分かりました。インフルエンザにはウイルスを抑え込むタミフルなどの治療薬があり,検査もこれまでの検査キットで診断できたからです。

 それに比べて,新型コロナウイルス感染症は,当初,検査キットがなくて,PCR検査も限られた施設でしかできず,治療薬に関してもあれが効きそうだとか,それは効果がないとか,一定の評価が出るまでかなり時間がかかりました。そのため,最初の1年間は患者を見つけては,濃厚接触者を1週間隔離し,世間への流行を抑え込むのに必死でした。海外からの飛行機も飛ばなくなり,国内旅行も県外に出られなくなりました。観光業で生計を立てる人にとっては大変な時期だった思います。横浜港に帰ってきたクルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号から乗客が降りられず,毎日のようにクルーズ船の映像がニュースで流されました。また,有名人がコロナで亡くなると,葬儀もできず,遺骨になって帰ってくるのを玄関で待つ映像がテレビでよく流されました。私の母親も94歳で,介護施設に入居していますが,まだコロナに罹っていません。ワクチンは7回くらい接種して用心はしていますが,未だに施設では外からのウイルス持ち込みに気を遣っていて,マスクは必須ですし,面会も時間を気にしながら会いに行っています。

 今回のインフルエンザ患者数が過去最高になったのは,新型コロナで感染予防を心がけた影響があります。人間の体には,免疫機能が備わっていて,体に入ってきたウイルスに対して,次から対抗できるようになっています。インフルエンザは一度罹患すると,免疫が働くので,しばらくはその型のウイルスには罹患せずに済みます。世間でインフルエンザが流行すると,その免疫が刺激され,高い防御機能を維持できるのですが,新型コロナの時に徹底して感染予防を心がけたため,免疫機能が刺激されず,防御機能が落ちてしまったのです。そのため,インフルエンザの流行が始まると,免疫力が弱い人が多くて,皆がインフルエンザに罹ってしまうのです。また,タミフルなどの特効薬で軽く済むと,免疫が充分にできず,短期間で罹患することがあります。

 ちょうど今,中国ではヒトメタニューモウイルス感染症が大流行しています。日本でも時々流行が見られる気管支炎や肺炎を起こす呼吸器系のウイルスですが,中国ではゼロコロナの影響で日本よりも厳しく感染防御を進めましたので,いろいろな感染症に対して国民全体の免疫力が低下していると思われます。そのため,感染症が流行すると,爆発的な流行が起こる可能性があります。中国の病院で,待合室で肩を寄せあうように多くの人が点滴をしている写真がネットニュースに出てきます。私は上海の徐匯区中心医院の小児科外来を十数年前に見学に行ったことがありますが,とても混雑していて,患者数に比べ,医師の数が足りないと感じました。この時は何も流行していない時だったのに,あの混雑でしたから,今回のようにヒトメタニューモウイルス感染症の大流行があれば,医療現場は大変だろうなと想像ができます。そんな医療状況から,コロナの時に中国政府は感染症のコントロールが必要だと考え,ゼロコロナ政策を選んだのだと私は考えていますが,これからいろいろな感染症が以前よりも大きな流行の波になるのは間違いありません。3年間流行がなかったので,いろいろな感染症の流行が始まると3年分の大きな波になるのですから。